テスラのDojoスーパーコンピューター：AIの野望と変化する優先順位のタイムライン

イーロン・マスクは長年にわたり、テスラは単なる自動車メーカーではなく、AI駆動型企業であると強調し、完全自動運転（FSD）の実現を目指してきました。そのビジョンの重要な要素の一つが、Dojoと呼ばれるカスタム構築のスーパーコンピューターであり、テスラのFSDニューラルネットワークのトレーニングに特化したものです。

マスクはDojoがFSDを「ほぼ自動運転」から完全自動運転へと飛躍させる画期的な技術であると宣伝してきました。しかし、2025年を迎え、新たな名前が浮上しました。それが、テスラの最新AIトレーニングスーパーコンピューター「Cortex」です。Cortexはテキサス・ギガファクトリーに設置されており、これによりDojoの役割が変化している可能性が浮上しました。この変化により、Dojoの今後についての疑問が広がっています。

ここでは、Dojoのこれまでの歩みを振り返り、現在の状況を整理します。

2019年 – Dojoの初登場

• 4月22日 – テスラのオートノミーデーでマスクがDojoの構想を初めて明かし、FSDの進化に不可欠なAIトレーニング用スーパーコンピューターになると発表。

2020年 – Dojoのプロモーション開始

• 2月2日 – マスクがDojoの可能性を強調し、膨大なビデオデータの処理が可能な強力なAIトレーニングシステムと説明。
• 8月14日 – マスクがDojoを「モンスター級のコンピューター」と呼び、2021年8月ごろの稼働開始を予想。
• 12月31日 – マスクが「Dojoなしでも自動運転は可能だが、FSDの性能を大幅に向上させる」と発言。

2021年 – テスラがDojoを正式発表

• 8月19日 – テスラ初のAIデーでDojoを正式に発表し、D1チップ（NvidiaのGPUと連携）を紹介。
• 10月12日 – Dojo技術ホワイトペーパーを公開し、ディープラーニング向けの新しい浮動小数点演算規格を発表。

2022年 – Dojoの進展と最初の設置

• 9月30日 – テスラ第2回AIデーで最初のDojoキャビネットを公開し、2023年第1四半期までにExapodクラスターを完成予定と発表。

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2023年 – Dojoが「ハイリスクな賭け」となる

• 4月19日 – マスクが投資家に対し、「Dojoはトレーニングコストを大幅に削減し、AWSのようなクラウドサービスとして販売できる可能性がある」と説明。
• 7月19日 – テスラがDojoの生産開始を発表し、10億ドル超の投資を計画。
• 9月6日 – マスクが「テスラはデータ量に制約を受けている」と述べ、NvidiaとDojoの両方がAIトレーニングの拡大に不可欠と強調。

2024年 – Dojoの拡張計画とCortexの台頭

• 1月24日 – マスクがDojoが稼働中であり、Dojo 1.5、2、3と継続的にアップグレードされると発言。
• 1月26日 – テスラがDojoスパコンに5億ドルを投資し、ニューヨーク州バッファローで建設を発表。ただし、Nvidiaシステムほど重要ではないと指摘。
• 5月20日 – マスクがテスラ・ギガテキサスに超高密度の水冷AIクラスターを設置すると発表。
• 8月26日 – マスクが「Cortexはテスラ本社（オースティン）の巨大AIトレーニングスーパーコンピューター」と発表し、Cortexに焦点をシフト。

2025年 – Dojoがテスラの議論から消える

• 1月29日 – テスラの2024年第4四半期の決算報告で、Dojoに関する言及が一切なし。代わりにCortexがFSD V13のトレーニングに不可欠であったと強調。

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今後のDojoの行方は？

最新の動向から、テスラのAIトレーニング戦略がDojoからCortexへとシフトした可能性が高まっています。かつて画期的な独自AIトレーニングシステムとして構想されていたDojoですが、テスラがNvidiaハードウェアへの依存を強め、さらにCortexの構築を加速させる中、その長期的な重要性に疑問が生じています。

今後、DojoはCortexと並行して運用され、FSDの次世代モデルのトレーニングに活用される可能性があります。しかし、最近の決算報告や投資家向けの発言でDojoがほとんど言及されていないことから、マスクがかつて描いた「ゲームチェンジャー」としての役割は薄れているように見えます。

Dojoが今後もテスラのAI資産として存続するのか、徐々にフェードアウトしていくのか、あるいはCortexと統合されるのかは依然不透明です。しかし、現時点ではテスラのAIインフラの中心は、NvidiaベースのCortexへと移行していることは間違いないでしょう。